【お便りコーナー】第55回: 青猫 草々先生

小説家になろうをいつもご利用頂きありがとうございます。
この度、小説家になろう登録作者である青猫 草々先生よりお便りを頂きましたのでこの場にて利用者の皆様にお伝えいたします。

以下、青猫 草々先生よりご連絡いただきました文面となります。



 「小説家になろう」というサイトがあります。

 仮にこのサイトの名前が、「小説家になりなさい!」だったらどうでしょうか?
 何だか、無駄に偉そうです。
 小学生の頃、母親によく言われた「宿題やりなさい!」に通じるものがありますね。
 これでは、

「うるさいなあ。今からなろうと思ってたんだよ。そんなこと言うから、なる気が無くなっちゃったじゃないか」

 という事態を招きかねません。

 あるいは「建築家になろう」というサイト名だったら?
 一見、悪くなさそうです。活用する価値アリかもしれません。
 きっと志を同じくする人々が集っていて、デザインや図面を上げると助言や批評をくれるのでしょう。

 しかし、そこで切磋琢磨し腕を上げいい感じに馴染んできたころ、あなたはふと気付くのです。
 もしかして、ここに居ても小説家にはなれないのでは? と。
 何と巧妙なトラップ。油断も隙もあったものではない。

 そう考えると「小説家になろう」という名称は、偉そうでもなく押しつけがましくもなく、また建築家ではなくちゃんと小説家の道へと誘ってくれる、サイトの趣旨を適切に表現したものではないでしょうか。

 ――どうも、はじめまして。青猫草々と申します。
 まずは少しだけ、自分語りにお付き合いください。

 そのとき私は、大変貧乏、かつ時間だけは大量にあるという立場でした。
(あ、ちなみに学生ではなくいい年の大人ですよ。ヒントはノージョブ)

 ありていに言って暇を持て余していたというか、持て余した暇を将来の不安に怯え布団の中でガクブルすることに全ぶっ込みしているような有様だったため、こりゃいかんと何か生産的な活動を始めることにしたのです。

 そこで思いついたのが小説の執筆。
 昔から本を読むのは好きだったので、この機会に何か書き上げてアマチュア作家を気取ってみるのも悪くなかろう、ふふん、と考えたわけです。
 いえ悪くなかろうも何も、部屋に転がってぶるぶる振動してるだけの排泄物製造器より悪いものなど世の中にはそうそうないのですけどね。

 このように元を正せば自分のために始めた活動だったわけですが、いざ書いてみると誰かに読ませたくなるのが人情というもの。
 そこで私は、どこかの小説投稿サイトにアップしてみようと思ったのでした。
 なお「友達でいいんじゃ?」などという疑問は今すぐ忘れてください。悲劇が浮き彫りになりますから。

 さて、創作というのは価値観や思想、感性など、己の全てを作品に込める行為です。
 それを公開することは、しばしば自分の裸をさらすことにたとえられますね。

 当時、私はなにもかも未経験の、初心なおっさんでした。
 自分のあれやこれやが全て衆目にさらされると考えると、それだけで頬が熱くなってしまう恥ずかしがりやのおっさんでした。

 しかし弱気を克服しないと、いつまで経っても前に進めないおっさんのまま。
 私は覚悟を決めます。
 どうせなら! できるだけ大勢に! 俺の裸を! 堂々と! 見せつけてやる!

 であれば、その場所は慎重に選ばなければなりません。
 一糸まとわぬ私のすべてを、もっとも効果的に解放できる舞台はどこだろう?
 そうして辿り着いたのが、このサイト「小説家になろう」でした。

 さっそく私は自分をさらすことにしました。
 私の私自身をあらわにし、惜しげもなく見せつけました。
 幸いなことにそれは多くの人の目に触れ、多くの声をいただくことになりました。

「な、なんて見事なブツなんだ……ボクの中に何度も激しく刺さったよ」(注:作品の感想です)

 という行為的、じゃない好意的なものもあれば、

「テクがない。雑で乱暴ね。イタいだけだわ」(注:作品の感想です)

 とか、

「貧弱で粗末(文才が)。入れるのをためらうくらい(ポイントを)」

 という辛辣なものもあったと記憶しています。
 いずれにしろダイレクトな反応が目に見えるというのは私にとって大きな刺激で、それはまさに未知の快感とも呼ぶべきものでした。

 ところで。
 小説作品には必ず書き手と読み手が存在します。
 双方いないと文化として成立しえず、どちらが偉いというものでもないのですが、数から言えば書き手の方が少ないでしょう。

 ここで私は、読み手側の経験しかない方に対し、えいやと裸になって境界線を飛び越えてしまうことを提案します。
 そこにはきっと、お話を読むのとはまた違った楽しさがあるからです。

 「小説家になろう」というサイトは、その名前が示す通り気軽に書き手となって作品を発表できるシステムになっています。
 せっかくここを訪れたのですから、最大限に楽しまないのはもったいない話だと思うのですね。

 ええ、つまるところ創作のススメなのでした。
 皆さんも、まずはお気軽に最初の一歩を踏み出してみてはいかがですか?
 裸になるのはなかなか勇気が必要ですが、やみつきになるような開放感が味わえることうけあいです。

 そして、もう一つ。
 もしそういう勇気ある姿を目にしたなら、読み手の皆さんはぜひ積極的に「すごくおおきい!(志が)」「なんて立派なんだ!(度胸が)」と伝えてあげてください。
 作者は大いに悦び大いに興奮し、さらにむくむくと天にも届く勢いで膨れあがらせるに違いないのです(執筆意欲を)。

 そういう私が全てをさらけだした作品はこちら。

「押しかけ犬耳奴隷が、ニートな大英雄のお世話をするようです。」
なろう連載版
https://ncode.syosetu.com/n4513dn/
書籍版特設ページ
http://over-lap.co.jp/narou/865542387/

 1/25に2巻が発売されます。
 気が向いたら、目を通していただければ幸いです。

 それでは、よいなろうライフを。