【お便りコーナー】第183回: 来須みかん先生

小説家になろうをいつもご利用いただきありがとうございます。
この度、小説家になろう登録作者である来須みかん先生よりお便りをいただきましたのでこの場にて利用者の皆様にお伝えいたします。

以下、来須みかん先生よりいただきました文面となります。

【小説では、どの漢字を使うのが正解?】というお話。

こんにちは、来須(くるす)みかんと申します。

いつも楽しくお便りコーナー拝見しています。

私はこちらのコーナーには3回目の応募になるのですが、今回は『小説では、どの漢字を使うのが正解?』というお話です。

これは、私が商業デビューする前に一番気になっていたことです。

どの言葉を漢字にするか、ひらがなにするか、またはカタカナにするかによって、だいぶ印象が変わってきます。

なので、デビュー前の私は『もし、書籍で使う漢字が決まっているのなら、誰か教えてほしい』とずっと思っていました。

結論からいうと、【正解はなく、どの漢字を使ってもいい】です。

でも、デビューしたあとに分かったのですが、出版社さんによって、それぞれのルールがありました。

例えば、A社さんは「~ころ」とひらがな固定。でも、B社さんでは「~頃」と漢字固定など。

数字は特に各社によっていろんなルールがありました。

こちらでは「一人」で、あちらでは「ひとり」が正解。

「十人」と書いてほしいと言われるところがあれば、「一〇人」と書いてと言われることも。

これはもう打診をいただいた出版社さんのルールに合わせて、その都度、修正するしかありません。

なので、小説家になろうさんで連載するときは、どの文字を漢字にしても、ひらがなにしても、カタカナにしてもOKということなんですね。

話は少し変わるのですが【表記ゆれ】という言葉があります。

これは、作品内で同じ言葉なのに、違う表現をしていることを言います。

例えば、1ページ目では「うなずく」とひらがなで書いているけど、2ページ目では「頷く」と漢字で書いているとか、ざっくり説明するとそういうのです。

私は未だに小説家になろうさんで連載しているときは、その日の気分で表記ゆれまくりなのですが、書籍化する際には、これらを作品内ですべて統一する必要があります。

なので、【自分はこの言葉では、この漢字を使う】と決めておくと、書籍化する際に楽になるかもしれません。

そういう私は、最近になってようやくこのことに気がついて、自分が小説で使う漢字・ひらがな・カタカナ一覧を作りました。

次回作から、このマイルールに従い小説を書こうと思います。そうしたら、書籍化作業がもっとスムーズになるはず……どうして、このことに早く気がつかなかったのか悔やまれます。

ちなみに、この『そうか、一覧を作ったらいいのか!』と気がついたきっかけは、某大御所ミステリー作家さんが、そういう一覧を作っていて、どの漢字にどういうふりがなを、どれくらいの文字スペースでふるかまで、すべて事細かに決めている、ということをネットの記事で見たからです。

さすがにそこまではできませんが、「あっそうか、私も一覧を作ったらいいのか」となりました。

以上、何か参考になれば幸いです。

以下、宣伝です。

9/18にNiμノベルス様より、書籍が発売します。紙と電子両方です。コミカライズも進行中です♪

「捨てられた邪気食い聖女は、血まみれ公爵様に溺愛される ~婚約破棄はいいけれど、お金がないと困ります~」公式サイト:https://niu-kasakura.com/details.php?workNum=45

今回、購入特典がいろいろあるので(書き下ろしSS3種類、イラストペーパー付、有償アクリルコースター付)気になる方は、来須(くるす)みかんのXか、小説家になろうさんの私の活動報告で確認してくださいませ。

もう一つ宣伝です。
新しくコミカライズが連載スタートしました。

『社交界の毒婦とよばれる私~素敵な辺境伯令息に腕を折られたので、責任とってもらいます~』
 マンガ:霜月かいり先生

以下のサイトで連載中です!
 〇マンガPark:https://mangaparkprod.page.link/8zvQ
 〇ヤングアニマルWEB:https://younganimal.com/series/edc2509325617

どうぞよろしくお願いします。

【お便りコーナー】第182回: BPUG先生

小説家になろうをいつもご利用いただきありがとうございます。
この度、小説家になろう登録作者であるBPUG先生よりお便りをいただきましたのでこの場にて利用者の皆様にお伝えいたします。

以下、BPUG先生よりいただきました文面となります。

皆さん、初めまして。
9月10日火曜日にカドカワBOOKS様より「逃亡賢者(候補)のぶらり旅 〜召喚されましたが、逃げ出して安寧の地探しを楽しみます〜」が発売となりました、BPUGと申します。名前の読み方は”びーぱぐ”です。黒パグ大好き作家です。よろしくお願いします。

さて、書籍化となったこちらの作品、2024年1月2日に一旦完結マークを付けた時点で472話、213万文字という大長編となっていました。
そして小説家になろうの運営であるヒナプロジェクト様から、企業からの打診という度肝を抜くようなメールを受け取ったのが2024年1月17日。
なぜかそれに続いて数件他社様からも……
そうです。すべて完結してから打診をいただきました。

200万文字書いている間は何もなかったのに!
突然なんでこんなに!?

これが、正直な私の叫びです。
ほぼ毎日投稿をして一年半。472話。213万文字。
完結時の総合評価は7,248pt、ブクマは1,638件。スクショを撮ったのでばっちり残っています。
悪くない数字だと思います。自分で言うのもなんですが、ヒット作ではないけれど隠れてもいない良作といった立ち位置。
でもなぜか完結まではなんにも起こりませんでした。

なんでだろう?
担当者さんにも最初の打合せで「なんで今まで見つけられなかったのか……」なんて言われたことも覚えています。
根が単純なので「そんなこともあるんだ~」だなんてすんなり納得してみたり。

そう、そんなこともあるのです。
だから私が皆さんにお伝えしたいことは、「書き続けること」と「書き終えること」です。

どうか物語を途中で投げ出さないでください。
主人公を、キャラクターたちを大切にしてください。
主人公の未来を奪わないでください。
もしかしたらそれが書籍化作家になるという貴方の未来まで奪ってしまうかもしれません。

私のこの考えは、”商業作家”の姿勢からはもしかしたら外れているのかもしれません。
でも「作家になること」ではなく、「物語を書くこと」が好きな誰かには届いて欲しいと願っています。
数万、数百万という文字の山を築いた先から見える景色に光が輝きますように。


◆書報 - 出版作品詳細◆
https://syosetu.com/syuppan/view/bookid/7545/

【お便りコーナー】第181回: 有沢真尋@9.13「離婚するつもりだった」発売先生

小説家になろうをいつもご利用いただきありがとうございます。
この度、小説家になろう登録作者である有沢真尋@9.13「離婚するつもりだった」発売先生よりお便りをいただきましたのでこの場にて利用者の皆様にお伝えいたします。

以下、有沢真尋@9.13「離婚するつもりだった」発売先生よりいただきました文面となります。

はじめまして。
お便りコーナーに文章をお送りするのは初めてです。
「小説家になろう」2018年登録の有沢真尋です。

このたび、小説家になろうに公開した短編「離婚するつもりだった。」の長編連載版が「離婚するつもりだった 私が顔も知らない旦那様に愛されるまで 」というタイトルで書籍化し、ビーズログ文庫(KADOKAWA)さまから9月13日に発売になります。
この作品は、短編版からずいぶん読者さんに応援頂いた小説です。
どうもありがとうございました!


私はこの数年間、短編のコミカライズや連載作品の電子書籍化、受賞作のノベルアンソロ収録や書き下ろしのお仕事などは頂いておりましたが、単著の紙書籍は2024年にして初めてです。
シンデレラだらけの「小説家になろう」では、ある意味で遅咲きと言えるタイプかもしれません。

「小説家になろう」という場所は、才能のあるひとがたくさんいます。
初めての投稿でランキングを駆け上がり、商業化!
投稿始開始一年以内に商業化!
一度商業化したら、以降の新作もそれまでの既存作品も続々商業化!
という先生方を、いっぱい目にします。

まれに、涓滴岩を穿つがごとく「ひとつの作品をずっと書き続けて、それで商業化しました」という選ばれし者もいます。そういう方は「好きなことを書けばいい!」「自分が面白いと思うものはいつか認められる!」という信念を発言したりもしています。

さらに作者の中には「作家になりたいと思っていたわけじゃないけど、なんとなくなってた」と言い出すひとまでいます……! そういった発言を目にするたびに「一生懸命に取り組んでいるはずなのに、結果がでない自分には何が足りないの?」と感じる作者さんもいるかもしれません。

いずれにせよ、こうして「さっさと商業化する」「いくつも商業化する」「売れ線など考えず好きなものを書いても商業化する」という方が見渡せばざくざくいるのが「小説家になろう」です。

作者以上に、読者さんは日々それを「当たり前の光景」として目の当たりにしているかもしれません。
読者さんが作者に求める才能や実力といったものの基準が「そこ」なのかと思うこともあります。
スコッパー気質(埋もれた名作を見つけるのが好き)でもない限り、たいていの読者さんは「外れ」をひきたくないでしょうし、才能のある作者の面白い作品を読みたくてなろうを開いているのではないかと思います。
書籍化したいと願いながら、なかなか声がかからない作者にとっては、夢がある反面、辛い環境でもあるかもしれません。


では、こういった「小説家になろう」という場所で、何年も何年も紙書籍(単著)を出すことなく日々淡々と書いていた私は、何を目的に何をしていたのか?

検索外にあるもの、別サイトオンリーのものを合わせればそれこそ500~600万字以上書いていると思います。なろう登録前は何年間も公募に出していたので、そのへん合わせるともう何作、何文字書いたか全然わかりません。

たまにSNSで「作家デビューするまでに書く平均は300万字」といった有識者の発言が流れてきたりしますが「もうとっくに書いた」と思っていました。「小説投稿サイトにいるとだいたい3年くらいで周りの顔ぶれが変わる」と言われても「私、ずっとここにいます!」とも思っていました。

たくさん書いて、何年も書いて、後から登録したひとがどんどん華々しくデビューしていっても自分のペースで書く。

そこにあるのは「いざデビューしたら、売れる作家になりたい」という信念です。
商業デビュー前に書いている期間は、私にとってずっと準備中の位置づけでした。

この「売れる」という言葉の響きにはムッとする方もいるかもしれませんが、私の考える「売れる」というのは「その作品があることでたくさんの仕事が新たに生まれて、この業界で生計を立てていけるひとが増えること」です。その中に「作者としての自分が、作家としての仕事を途切れさせずに続けていくことができる」という意味も含まれています。
それは、読者さんの支持なくしては成り立ちません。

書籍化しても、打ち切りになる作品があります。なぜそうなるのかを真剣に考えたとき「WEBで読めば十分。買ってまで読む必要はない」と読者さんに思われてしまったのではないか? と思いました。
一方で、大活躍の先生方の作品は、WEB連載で読めるにもかかわらず、グッズ付きの書籍が完売、電書も常に複数のストアでランキングに入っているという例もあります。とにかく熱い強火ファン、コンプリートする勢いで買う読者さんがついていて、しかも日々増えているのではないか? と素人考えながら感じます。

だとすると。
たとえば、たまたま書いた長編1作品で「いきなり人気が出て」「すごいブクマ数・ポイント数で書籍化」だけでは不安になりませんか?
その作品にファンがいたとしても「常時ランキングにいる」化け物作品でない限り、新規の読者さんはそれほど増えず、書籍化しても「ブクマしてくれている読者以外には全然知られていない作品」になっている危険性はありませんか?

私のように商業化まで長い時間のかかったひとは、そういう例をいくつも見て、自分だったらどうするかを考えています。

書籍化した先生が「最初の作品のときは逆お気に入り500名くらいだったかなぁ」と言っているのを見ると、「どんなにブクマがあっても、作者単体で読者に対するアピール力が弱いと打ち切りになるかも?」と考えたりします。
SNSで「フォロワーが多いからといって作品が読まれるわけじゃない!」と言っている先生を見ると「作家として認識してくれる読者さん(固定ファン)がいないと、宣伝力は低いのかな?」と考えます。

こういう考えから、自分なりに「このラインまでいかなければ、デビューしても作家としての活動を軌道にのせられない」(たとえば最初の紙書籍の時点で逆お気に入りさまは3000名以上など)という目標があって活動していたので、たとえ周りがどんどんデビューしても、焦らず自分のペースで何年間も書いていられたんだと思います。

その間、いろんな方にずいぶんお世話になりました。自分ひとりでここまで来れてないです、どうもありがとうございます。

また、「小説家になろう」には頭の良い方がたくさんいます!
私は短編コミカライズの単話配信があったとき、他の先生がしっかり書報申請しているのを見て「単話でもできるんだ!」と気づきました。
電子書籍化の際にお便りコーナーに文章を送っている先生を見て「電子書籍化のときでもOKなんだ!」と気づきました。
考えてみれば、当たり前のことでどこにもだめとは書かれていないのに、最初にやっているひとを見るまで全然思いつかないこともたくさんあります。日々、とても勉強になります。

準備期間が長いと「自分だったらどうする?」ということをたくさん考えることができて、それはそれでとても大切な時間になると思います。
私がお伝えできるのは「自分の活動、これまでの歩み」という一例だけですが、何かの参考になれば幸いです。


最後に宣伝をさせてください。

「離婚するつもりだった  私が顔も知らない旦那様に愛されるまで 」
2024年9月13日発売 ビーズログ文庫(KADOKAWA)

KADOKAWAさまは公式サイトが現在のところ停止していますので「小説家になろう」内の書報にてご案内させていただきます。

https://syosetu.com/syuppan/view/bookid/7522/

ご縁がありましたら、何卒よろしくお願いします。

有沢真尋

【お便りコーナー】第180回:山口じゅり先生

小説家になろうをいつもご利用いただきありがとうございます。
この度、小説家になろう登録作者である山口じゅり先生よりお便りをいただきましたのでこの場にて利用者の皆様にお伝えいたします。

以下、山口じゅり先生よりいただきました文面となります。

皆さまはじめまして、山口じゅりと申します。

小説家になろう様で「聖森聖女~婚約破棄された追放聖女ですが、狼王子の呪いを解いて溺愛されてます~今さら国に戻れって言われても遅いですっ!」を連載しております。

この度、『聖森聖女』のコミックス3巻が、一迅社comic LAKE様より発売する運びになりました。
聖女ルチルと狼王子ルカの距離がぐんと近づき、書下ろしのおまけマンガも楽しい一冊に仕上がっているので、ぜひご予約、ご購入いただけたら幸いです!

『聖森聖女』第3巻 アニメイト予約
https://www.animate-onlineshop.jp/pd/2927667/

『聖森聖女』第3巻 書報【楽天、Amazon予約リンクあり】
https://syosetu.com/syuppan/view/bookid/7581/

読者の皆さまのおかげで、コミカライズも順調で作者としては嬉しい限りです。
この場をお借りしまして、御礼申し上げます。

さて、以下創作についての話です。

◆◆◆◆◆◆◆◆

今日は小説を書きあげるには?
というトピックでお話したいと思います。
完結させるには、と言いかえてもいいかもしれませんね。

小説を完成させることができずに、途中で投げ出してしまう……なんていうのは、小説を書く人ならあるあるかもしれません。どうしたら最後まで書くことができるのか、私が実践しているのは以下になります。

・一日一文字を目標にして(ほぼ)毎日書く
・書いた文字数を記録につけて、見える化する

この2つだけ。

小説を書く手が止まってしまうのは、いっぱい文字数を書こう、立派なものを書こうと意気込みすぎてしまうからじゃないかなぁ、と私は思っています。
であれば、おもいっきり執筆のハードルを下げてしまうのも一つの手。

一日一文字の目標であれば、達成は簡単ですし、毎日書き続けることもできますよね。
それに、とりあえず一文字書いてしまえば、一文字以上書いてしまうもので、これであれば毎日書き続ける習慣がつけられます。毎日書いていれば、自然と小説は完結に向かっていくのではないかと思います(少なくとも私はそうでした)

また、あなたが毎日書いた文字数を記録につけて、いつでも確認できるようにすれば、記録が増えるにつれて達成感も得られますし、せっかく続けてきた記録を途切れさせるのがもったいないなぁ、という気持ちにもなります。
これは、小説を最後まで書こうという原動力になるのではないかと思います。

良かったらぜひ試してみてください。
皆さまの創作に参考になれば嬉しいです!

山口じゅり

『聖森聖女』pixivコミックで連載中【無料で読めます♪】
https://comic.pixiv.net/works/9176

【お便りコーナー】第179回: 夢見里 龍先生

小説家になろうをいつもご利用いただきありがとうございます。
この度、小説家になろう登録作者である夢見里 龍先生よりお便りをいただきましたのでこの場にて利用者の皆様にお伝えいたします。

以下、夢見里 龍先生よりいただきました文面となります。

皆様、こんにちは。
はじめましてだったりお久し振りだったりするかとおもいますが、あらためてご挨拶させていただきます。
夢見里龍でございます。

小説家になろう 様に登録して約二年と七ヶ月ほどが経ち、今年九月をもって書籍化打診をいただいての出版が三作となりました。
「後宮食医の薬膳帖」メディアワークス文庫
「後宮の女官占い師は心を読んで謎を解く」ファミ通文庫(B六判)

 そして9月2日には新しく
「後宮の死化粧妃 ワケあり妖妃と奇人官吏の暗黒検視事件簿」
 https://ncode.syosetu.com/n7609ii/
こちらがアース・スタールナさまから書籍化されます。
後宮+エンバーミング+検視ミステリ+溺愛+LGBT要素+ヒューマンドラマという様々な要素を組みあわせたライト文芸で、屍を愛する僕っ娘の妃と彼女への愛執がきわまりすぎて奇人と変態(?)の境界線をうろうろするイケメン官吏が死にまつわる事件を解いていく後宮ミステリです。加筆修正もかなり頑張りました。
夢子様の絵だけでも一見価値アリですので、宜しければ、ぜひ公式サイト様の特設ページから覗いていただけると嬉しいです。
▷特設ページ https://www.es-luna.jp/bookdetail/42shigesho_luna.php

さて、そんなわけでご挨拶とご報告を終えて、ここからは「ココを意識したから書籍化打診をいただけたのかも」という経験則のようなものを書かせていただきたいとおもいます。もっとも、私はまだまだ「来年もまだ小説家と名乗れるだろうか」とおびえている身でして、ほんとうは皆様にアドバイスなんかできるようなものではございません。なので「へえ、こんなやりかたもあるんだ」「おもしろい考えかただな」程度に読んでいただけますと幸いです。

以前(https://blog.syosetu.com/article/view/article_id/4638/)は構成について語らせていただきましたので、このたびは導入について書かせていただきます。

小説は導入がいちばんたいせつというのは度々耳にする創作論です。現実にはいちばんではないとおもいますが、読者様がこの小説を読もうかなとおもったときに最もはじめに読むところであり、連載であればそこから投稿をはじめ、初動がきまるわけですから重要であることは確かです。
文庫では「10ページで読者を小説のなかに惹きこめ」と語られることもあります。これはおおよそ3000文字から5000文字程に換算できます。小説家になろう に投稿するときは1話から2話にあたります。現実にエピソード別アクセス解析をするとこのあたりから読者様が離れる傾向が強いです。それはもう、ばっさりとバイバイされています。悲しいくらいに。このバイバイをどれだけ減らせるか、それがブクマにつながると考えています。

ここからは持論です。

導入とは小説における「玄関」です。
家ではなく、レストランを想像していただけると解りやすいかとおもいます。どれだけ美味しい料理を提供していても、看板がなかったり、玄関が通りにむかってついていなかったり、価格帯がわからないと客足は遠のいてしまいます。

つまり、たいせつなのは「入りやすさ」です。

まずは「看板」です。
導入における看板とはタイトルのことではなく「これが売りですよ」というのが明確になっているか、だとおもっています。
大阪の〇〇道楽を想像してみてください。壁に高々と掲げられたカニの看板をみれば、どんな料理が食べられるか、なにがおいしいのか、すぐにわかりますよね。
「売り」とはつまり、読者の「期待」です。
小説の1話2話から何処に期待を寄せて読めばいいのかがわかる。これが「入りやすい看板」です。
私はココを意識しました。

後宮食医の薬膳帖では「不遇なヒロイン」が薬膳グルメで患者を治療し、事件の謎を解いて「活躍」し「昇進」していくということがわかるように心掛けています。まわりから疎まれ、処刑されかけているところをみせることで、彼女はどん底から這いあがるんだなという期待を読者様に抱いてもらうのです。
 
続けて「間口」です。
玄関の間口はなるべく通りにむけ、大きく取りましょう。
これは小説に置き換えると読者様にとってなじみのある要素を冒頭に提示することで「安心感」を提供することではないかと私は考えました。
後宮食医の薬膳帖では「処刑」から始めています。これは悪役令嬢ものを読みなれた読者様にとってスムーズに物語に入りやすい要素であると感じたからです。

また、後宮の死化粧妃では何処かで読んだことのあるような冒頭を意識しました。

不可解なことが起きる ⇒ 助手役になる人物(奇人官吏)が事件を解決する探偵役(妖妃)の噂を聴き、疑いながらも逢いにいく ⇒ ミステリアスな探偵役の登場 ⇒ こんなやつが探偵? と想うがずば抜けた推理を発揮

お約束です。王道です。
読者様によって思い浮かぶものは小説だったり漫画だったりと違えども、たぶん(なんか読んだことあるなあ)と感じるはずです。
ココを意識しました。
テンプレといえばそうですが、オリジナリティはそのあとに組みこめばいいのです。
これができるようになるまで、私はたぶん十年程かかっています。読んだこともない奇抜なものほどいいなとおもっていました。ですが、先人がやらなかったことの八割は先人が想いついたけど敢えてやらなかったことです。
お約束は安心感につながり、抵抗なく読み進められるようになると踏みました。

最後は「価格帯」です。
例えるならばそうですね提示されているメニューが「ランチ6000~」とか「鮨一貫時価」とか「シェフの創作ディナーのみ」とか、敷居が高そう。とおもったら、お客さんは素通りします。
読者様にとっての価格帯とは「作者が想定する読者層の幅」や「作者が読者にもとめる基礎知識」だとおもっています。これを払しょくするために私のたどりついた答えはこちらでした。

まず、ひとつ。要素をたくさんいれることです。
「薬膳」だけだと薬膳に興味のあるひとだけが読むことになります。でも「後宮」で「ミステリ」で「グルメ」で「恋愛」で「サクセスあり」といわれると、どの要素が好きなひとでも読みやすくなります。
 
もうひとつは読者に基礎知識を強要しないことです。
たとえば、テーブルに運ばれてきた料理を食べるまえに、つかわれているスパイスを嗅ぎわけないと食べられない料理って難易度高すぎませんか?

まえにお便りコーナーにて私は「専門知識を小説に組みこむ」という話(https://blog.syosetu.com/article/view/article_id/4583/)をしました。

ですが、いきなり難解な専門用語がならび、読むのに基礎知識を要する小説になるといっきに読者を選ぶことになります。
私はそのむかし、戦闘機が登場する小説を書いたことがあるのですが専門書を頭に叩きこんで、冒頭からドックファイトを披露し「フラットスピンした」だの「ラムジェット」だの用語をいれまくりました。だって格好よかったから…泣
意気揚々と公募にだしたのですが、結果、見事なまでに落選しました。
一夜漬けの知識をすっかり忘れた後で読むと、なにがなんやらわかりません。そりゃ落ちるわ。
解説もなく「ダブル・イフェクト」だの「デグレッセ」だの難解な用語が登場すると、ふつうの読者は「あ、これは私が読むことは想定されていないんだな」となるのではないかとおもいます。
スパイスの種類なんか知らんでも美味しい。これがいちばんです。
特に冒頭では控えましょう。後からコアな知識を織りこむのはいいです。読者が慣れたころを狙って、解説を添えて混ぜこみましょう。食べ進めて「これ、美味しいですね」と言われたころに「こちら、特殊なスパイスをつかっております」というのはすごくいいとおもいます。

長々と語りました。

*~*~*おさらい*~*~*
1「小説の導入はいわば玄関」
2「看板を取りつけよう その小説を売りを提示し読者様に期待を持ってもらうといいかも」
3「玄関の間口を広く取ろう 読んだことのあるお約束から始めると読み進めやすいかも」
4「誰でも食事ができるレストランになろう 要素は特盛り 基礎知識を強要しない」

経験則といいましたが、結局は私の失敗話です。笑ってやってください。
そしてここまでやっても、五割から六割くらいの読者様は1話から2話で「ばいばい」します。悲しい。でも残った四割ほどの読者様のなかに編集者様がいて、打診のお声が掛かるかもしれません。かかればいいな。

最後になりましたが、もう一度だけ宣伝させてください。

「後宮の死化粧妃 ワケあり妖妃と奇人官吏の暗黒検視事件簿」アース・スタールナ
https://www.es-luna.jp/bookdetail/42shigesho_luna.php
  9月2日発売(単行本)
ワケあり妃は屍を葬り、身分格差、男女格差によって隠された死の真実を暴く

上記のURLは公式サイトの特設ページにつながっており、人気絵師 夢子様による素晴らしい表紙絵や口絵をご覧いただけます。宜しければ冒頭10ページを"試し読み"いただき「お、これは続きが読みたいぞ」と想っていただけたら嬉しいです。
ついでにお迎えいただいた日には夢見里は喜びの舞を踊ります。
 
皆様の創作が幸せなものとなりますことを祈って、筆をおきます。それではまた、お逢いいたしましょう。
夢見里 龍