【お便りコーナー】第156回: 夢見里 龍先生

小説家になろうをいつもご利用いただきありがとうございます。
この度、小説家になろう登録作者である夢見里 龍先生よりお便りをいただきましたのでこの場にて利用者の皆様にお伝えいたします。

以下、夢見里 龍先生よりいただきました文面となります。

皆様、こんにちは。
 夢見里龍と申します。
 お久し振りの御方はお久し振りです。「またお前か」とおもわれた御方には「すみません、また夢見里でございます」とご挨拶させていただければ幸いです。

 私事ではありますが、まずはご報告です。
「小説家になろう」にて投稿いたしておりました「後宮食医の薬膳帖」がコミカライズとなり、ドラドラふらっと♭にて新連載スタートいたしております。作画はそ太郎さまです。華やかに毒と薬の世界観を表現してくださっていて、作者はもう、何度昇天しかけたかわかりません。そ太郎様の素敵な絵だけでも、どうか一度ご覧いただければ幸甚です。
 コミカライズ連載はずっと、夢だったので感激いたしております。
「小説家になろう」はほんとうに夢がかなうところですね。夢を夢で終わらせないため、これからも夢を見続けるため、今後とも誠心誠意頑張ります。
 
 さて、このたびはそんな「小説家になろう」にて夢を追いかけ、投稿を続けている皆様にむけて「こういうふうにやったら、打診をいただけたので、ここがよかったのかもしれません」という経験則みたいなものを書かせていただこうとおもいます。
 例によって例の如く、私はまだまだ荒海を漂う夢という木の葉にしがみついている身で、皆様にアドバイスができるような段階にはございません。
「これが正解」というわけではないので「参考までに読んでやろうじゃないか」みたいなきもちで覗いていただければ助かります。
 
 以前(https://blog.syosetu.com/article/view/article_id/4583/)は専門分野について語りましたので、今度は「構成」について、です。


 私は十六年前から公募を続けてきました。公募原稿を書く際には応募要項にある10万文字前後で「起承転結」のある小説が完結するよう、あらすじを組んでから書き進めていきます。
「小説家になろう」に要項はないので、好きなだけ、心が赴くままに書いても問題はありません。
 でも、私はゴールがないと走り続けることができないタイプなので、「小説家になろう」に投稿する時も公募と同様に十万文字前後で物語の「ゴール」を決めておきます。
 これが意外に、打診のとき、そして打診があった後に功を奏しているように感じています。
 そもそも、前提としてなぜ、公募の要項が10万文字前後なのか。
 ちょうどこれが「書籍一冊分」だからです。
 10万文字前後で「起承転結」がいったん終わっていると、編集部にとっても「書籍化打診」をかけやすいのではないでしょうか。
 よって私は10万文字から15万文字前後で「大きな起承転結」を設けるように心掛けています。

 さて、ここで「大きな起承転結」という言葉が登場しました。
 察しのよい創作者様はすでにお気づきだとおもいます。

「小さな起承転結」
 これこそが私が最も心掛けていることです。

「小説家になろう」において読者様は大変飽きっぽいです。そして、私も実は飽きっぽいのです(というか、ゴールがないと(省略)……)
 なので私は大筋の軸としながらも連作短編のような構成にしています。例えば「後宮食医の薬膳帖」は現在、「一部」から「六部」まであって、それぞれにひとつからふたつの事件を盛りこみ「小さな起承転結」を設けています。「後宮食医の薬膳帖」は架空の奇病が登場する中華後宮ファンタジーミステリなので、「一部」では「脚から梅の花が咲いた妃の奇病とその病因になった事件」を解決することになります。「二部」では「触れたものが全部燃えあがるようになってしまった皇后の奇病とその病因」を推理して、犯人を捜します。
 こうして連作短編調にすることで、読む側も書く側も負担を減らせるのでは、とおもっています。
 もちろん「小さな起承転結」のなかでもちょっとずつ大筋は進めていきます。
 大筋というのは「大きな起承転結」で、主要人物の関係であったり主人公が最後に達成する大きな目標、事件の解決だったりします。
 
 このように小説における構成の基礎は「起承転結」です。

 しかしながら「小説家になろう」において、読者様にもとめられているのは「起承転結」ではないと私は考えています。
 なぜならば「小説家になろう」の読者様はせっかちです。
 ちょっとでも冗長なところがあれば、即ブラウザバッグ、ばいばいです。「後から面白くなるから!」と御声をかけても戻ってきてはくださいません。これはしょうがないことです。読書というのは読者様の貴重な時間をいただくことですから、楽しくない時間を強要することはできません。

 ならば、どうすればいいのか。

 私はこれでもかとばかりに「転」をいれるようにしています。

「起転、転承転、転転転、転結」くらいが望ましいですね。所感ですが、読者も作者も落ちつく暇がないくらいにいれたほうがいいかなとおもいます。ただ、これが読者様のストレスになることもありますので、緩急をつけて時々はちゃんと緩めましょう。
 
 ついでに更新するたびに「引き」を最後に持ってきます。
「引き」というのは漫画における技巧のひとつです。ページの最後のコマに続きを読みたくなる展開を持ってくるというテクニックで「敵に襲われてピンチのとき、乱入してきたものがいた。加勢か、新たなる敵か?」とか「予想だにしなかったセリフを投げかけられて、果たして主人公はどうこたえる?」とか読者に「?」=「興味」を抱かせます。
 小説においてはあまりつかわれませんが「え、どういうことなの」「なんで」「いまのセリフはどういうこと」「どうなっちゃうの」という展開をマンガばりに持ってくるのが、読者様に続きを読んでいただくコツだとおもいます。(ついでにブックマークをつけていただけるかも)
 
 長々と語りましたが、あくまでもこれらは私が連載を続けるにおいて心掛けていることです。有難いことに続々と打診をいただいているのはこのお陰かなとおもったりはしていますが、正確なところはわかりませんので「へえ、こんな書きかたもあるんだ」と参考程度にしていただければ幸甚です。
 

 *~*~*おさらい*~*~*
1「10万文字くらいで「大きな起承転結」がひと段落すると、書籍化打診されやすいかも」
2「小さな起承転結で、連作短編調にすると読者も作者も飽きずに続けられるかも」
3「小説家になろうにおいては「起承転結」ではなく「起転、転承転、転転転、転結」が望ましいかも」
4「更新のたびに「引き」を設けるとブクマがつくかも」


 最後になりましたが、もう一度だけ宣伝させてください。
 上記のような構成を心掛けながら連載を続け、KADAKAWAメディアワークス文庫から書籍化した「後宮食医の薬膳帖」が大好評につきコミカライズしました!
 ドラドラふらっと♭にて連載開始しています!

 Comicwalker
  https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_FS06204484010000_68

 ニコニコ漫画
  https://seiga.nicovideo.jp/comic/66406?track=official_list_s1

 どちらからでもお気軽に御読みいただけますので、宜しければちらりと覗いてやってください。
 そ太郎様の作画はとにかく素晴らしいです、これだけは間違いありません。作者の想像していた何倍も可愛いヒロイン、格好いいヒーローが中華後宮を舞台に大活躍していて、作者は読みかえすごとに幸せすぎて床を転げまわっています、はい。
 読んで「おもしろいじゃん」「続きが読みたい」とおもっていただけたら、お気に入り登録をぽちっとしていただくと作者がもれなく感激の舞を踊りながら床を跳ねまわります。よろしくお願いいたします。
 
 メディアワークス文庫から発売の書籍版「後宮食医の薬膳帖」は現在2巻まで続刊していて、1巻はすでに重版出来(×2)です。
 本屋さんにもならんでいるはずですが、なにぶん、発売してから6カ月程経ってしまったので通販だと確実です。
 こちらから御求めいただけます。
  https://mwbunko.com/product/koukyu-syokui/
 
 皆様の創作の旅が楽しいものとなりますようにお祈りしつつ、ここで筆をおかせていただきます。
 それではまた、どこかでお逢いできれば幸甚です。

 夢見里龍