【お便りコーナー】第98回: 三上康明先生

小説家になろうをいつもご利用頂きありがとうございます。
この度、小説家になろう登録作者である三上康明先生よりお便りを頂きましたのでこの場にて利用者の皆様にお伝えいたします。

以下、三上康明先生より頂きました文面となります。

 新人賞を獲らずに商業小説家としてデビューしてから15年目に突入しました。
「小説家になろう」での初投稿は(今見たところ)2016/3/22なので、こちらは5年を過ぎたというところで、「小説家になろう」の歴史の中では新参だなぁと思います。
 書籍の出版数はもうちょっとで50冊になるかどうかというところで、「小説家になろう」の掲載文字数は450万字くらいのようです。
 15年で50冊弱、5年で450万字。そこそこ多いほうじゃないでしょうか。

 さて、「音楽史上の最高傑作」と聞いてなにを思い浮かべますか?
 ベートーヴェン。モーツァルト。このふたりはすぐに頭に思い浮かびましょう。
 ですが(多くの議論はあるでしょうが)ヨハン・セバスチャン・バッハの「マタイ受難曲」がそれだという評価が多いのはご存じでしょうか。
 ベートーヴェンが生涯に残した作品は、138。
 モーツァルトは600。
 ですが、バッハは1000を超えています。

「ホームランを打つのに必要なことは、バッターボックスに立つこと」というのは当然です。そしてそのバッターボックスに立つ回数は多ければ多いほどいい。バッハだって1000回以上、バッターボックスに立って「最高傑作」を生み出しているのです(ちなみに「マタイ受難曲」を聴いても私にはピンときませんでした)。
 とはいえこれは「数打ちゃ当たる」ということではなく、1度や2度の失敗どころか100度や200度の失敗でへこたれてはならないということです。さらには「毎回が勝負回」だと思わなければバッターボックスに立つ意味がありません。
 私はいまだに、小説の発売日前後は情緒不安定になりますし、生み出した作品は、放り出さずエンディングに導いてやりたいと心底思います(商業的な理由で続きが出ないことは多々……ほんとうに多々あるのですが)。

 書いて、発表した小説に反応がないと、それまで自分の中で膨らんでいた妄想やワクワクが一気にしぼみますよね。わかります。私もデビューまで8年くらい、結果が出ない時期を彷徨い、暗闇で壁当てしているような気持ちで書いていました(一応言っておくとデビューしても「数字の壁」に壁当てしている気分になります)。
 けれど、書かなければ先に行けません。バッターボックスに立たなければゲームは始まらないのです。
 書きましょう。
 書かない理由はいくらでもあります。疲れた。忙しい。やりたいゲームがある。読みたい漫画がある。酒飲みたい。酒飲んだ。すでに二日酔い……。
 そこには目をつぶって「書く理由」だけ見つけてください。他の誰でもない自分にしか書けない小説を書きたい。どうしても誰かに伝えたいメッセージがある。俺のキャラが魅力的過ぎて他の人にも見せたい……。

 そしていつかホームランを打つ未来にたどり着きましょう。
 毎回が勝負回。いまだ新人気分が抜けないチャレンジャーの私もまだたどり着けていません。いっしょに、その未来を目指そうではありませんか。