【お便りコーナー】第114回: 優月アカネ先生

小説家になろうをいつもご利用いただきありがとうございます。
この度、小説家になろう登録作者である優月アカネ先生よりお便りをいただきましたのでこの場にて利用者の皆様にお伝えいたします。

以下、優月アカネ先生よりいただきました文面となります。

 なろうの皆さま、こんにちは。優月アカネと申します。
 こちらのお便りコーナーは、ちょっとしたコラムのようでもあり、また、書籍化された諸先生方の人間味を感じることができるため、毎回楽しく拝読しておりました。
 今回寄稿する機会を得ましたので、書籍化に至るまでの小話や、僭越ながらアド"バイスっぽいことを書いてみたいと思います。

 そもそも私は文学とは無縁な世界でボンヤリと生きてきました。ライトノベルにも馴染みがなかったのですが、人気漫画の原作から「小説家になろう」の存在を知り、「読み専」から作者に発展したクチです。

 書籍化した『最強魔王様は病弱だった!~溺愛された地味薬師の異世界医療改革~』(書籍タイトル:薬師と魔王 永遠の眷恋に咲く)は、私の初投稿作でもあります。
 薬関係の仕事をしていたことから、「薬学の面白さを広めたい」という思いでなんとなく書き始めたのですが、当初のクオリティはとても低いものでした。罫線や三点リーダーは偶数個、感嘆符の後ろは一マス空けるといった作法ができていないのは当たり前で、誤字脱字が溢れかえっていました。内容も内容で、読者を選ぶようなネタ(例:ニキビから石鹸を作る。懸命な大人の判断により、書籍版からは削除)が相次ぎ、賛否さまざまなご意見を頂戴しました。
 けれども、私は書くことを止めませんでした。なぜなら私の目標は薬学の布教にあり、全ての読者をハッピーにすることではなかったからです。こんなことを言っていいのか分かりませんが、「楽しいと思ってくれる人だけ、楽しんでくれればいい」という気持ちだったのです。

 この意思は半分正解で半分誤りだったと、少し後になって気が付きました。
 物語を書く情熱はあったのですが、アクセス数やポイントに伸び悩み、いったん状況を振り返ってみたのです。
 そこで、薬学の布教が目的であるならば、尖りすぎた内容ではなく大衆に受ける要素を盛り込み、門戸を広く持った方がよいということに気が付きました(今更!)。
 妙に強気だった自分を改め、頂いたご意見はすぐ内容に反映しました。「ニキビ石鹸」などというニッチなネタではなく、ペニシリンや再生医療といった耳に馴染みのあるネタを考案しました。
 これは別に読者のイエスマンになったわけではなく、ちっぽけな自分のポリシーと照らし合わせ、「いいや、私は元のままの方が楽しいと思う」という場合は自分の感覚を尊重しました。

 幸いにして素晴らしい読者様方に恵まれ、作品はどんどんいい方向に変化し、結果的に以前より多くの方に見て頂けるようになりました。そして最終的には、雲の上の話だと思っていた書籍化というところまで達することができました。

 素人読者が作者になってみて、小説を書くということは非常に難しいものだと痛感しました。ただ一文一文を羅列するだけでなく、文の積み重ねにストーリーの波を持たせ、人間の感情を揺さぶるものでなければいわゆる商業書籍にはならないのだろうと思います。むろん趣味として好きに書くということにおいては、何の縛りもあるはずがありません。

 このような経験を経て、「書籍化を目指す場合にはどうしたらよいか」ということに対する私なりのアンサーはこちらです。
 書籍をチラッと見て頂ければ一目瞭然ですが、私は決して文章力が高いわけではありません。ではなぜ書籍化できたのか?
 それは、「自分が好きなことを書き」「なるべく多くの人に受け入れられるよう、適度に流行を取り入れ」「頂いたご意見ご感想を前向きに検討」し、「一年弱、死ぬ気で試行錯誤した」からです。
 この四点を押えれば、かなりの確率であなたの作品も日の目を見ることと思います。もちろん様々な考え方がありますので、そのうちの一つとして「ふーん」と思っていただければ幸いです。
 ただし、一つ注意点があります。「一年弱、死ぬ気で試行錯誤した」副作用についてです。
 私の場合、筋肉の著明な衰えが生じ、健康診断で貧血を指摘され、体重は五キロ増加しました。

 健康あっての執筆活動です。本当に死んでしまっては意味がありません。この秋は運動に勤しみたいと思います。
 どうか皆さまご無理なく、そして何より楽しく取り組まれますよう。共に頑張っていきましょう。

▼薬師と魔王 永遠の眷恋に咲く(上下巻)
リケジョ薬師×病弱魔王様の異世界医療ファンタジー。
KADOKAWA メディアワークス文庫
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上巻 Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4049146479?tag=mwbunkoweb-22 
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